1945 福井県芦原町(現:あわら市)生まれ
1968 金沢美術工芸大学産業美術学科工業デザイン専攻卒業
1971 日本陶芸展選抜アメリカ・カナダ巡回展
現代の陶芸アメリカ・カナダ・メキシコと日本(東京国立近代美術館)
1972 ファエンツア国際陶芸展ラベンナ観光局長賞受賞(イタリア)
1973 日本陶芸展選抜メキシコ・アルゼンチン巡回展
1974 第11回日本国際美術展
1979 JAPAN TODAY(アメリカ シカゴ)
1980 CLAY WORKやきものから造形へ(大津、東京)
1982 イタリア巡回日本現代陶芸展(ローマ、フアエンツア)
1985 国際現代陶芸展(台北市立美術館)
1987 87八木一夫賞現代陶芸展 大賞受賞
1991 世界陶芸祭コンペ 優秀賞受賞(信楽)
1993 世界の工芸展(京都国立近代美術館)
1996 冒険美術アドベンチャー・大地のささやき展(滋賀県立近代美術館)
1999 NHK衛星放送『焼き物探訪』展(東京 日本橋高島屋)
2001 金沢21世紀美術館収集作品展(石川 金沢市)
2002 第2回円空賞受賞
名古屋芸術大学企画展 久世建二の世界展
2003 久世建二展(伊丹市立工芸センター)
2004 久世建二展(常滑 INAX TAILE MUSEUMU)
2005 疎通と拡散—韓中日国際陶芸交流展(ソウル ミラノ美術館)
2006 現代陶芸の粋展—東日本の作家を中心に—(茨城県陶芸美術館)
2007 金沢美術工芸大学学長就任
本日は、平日にもかかわらず多くの皆様に集まっていただき、ありがとうございます。
1968年に大学を出て以来、40年間、売れないもの、世の中の役に立たないものを作ってきましたが、そういうものにこそ人間にとって大事なものがあることを訴え続けてきたつもりです。
今日は、その40年間の軌跡をお話したいと思います。
左の方の作品は古い作品で、右の方が新しい作品になります。
「焼き物」とよく言いますが、私はスライドにある「クレイワーク」という言い方がふさわしいと考えています。焼き物=器、のようなイメージから離れたかった。土による造形=クレイワークということだと考えています。
1960年代後半の作品で、左のふたつは学生時代のものです。実家で陶器をつくっていましたので、ろくろは高校生の時に職人と一緒につくりながら覚えました。
左と右上の白い作品は40センチくらいの大きさで、右下の作品はバスケットボールから形をとったものです。どれも包んで縛ったかたちになっていて、「パッケージ」シリーズとしてオブジェをつくりはじめました。
大学を出てからは愛知の瀬戸で仕事につき、高校の教師をしていました。その後、70年代の初頭になって東京の有楽町で最初の個展を開きました。色々なものを縛って、包み方のバリエーションを何でも作品にしていました。金彩をほどこした作品は高さが50センチくらいのものですが、この金彩はラーメン鉢に描いてある龍などに使っているものと同じで、素焼きと本焼きの後に800度くらいで焼き付けます。
「家族の肖像」という作品です。愛知のアトリエ近くで撮影したものです。
パッケージシリーズには色々なバリエーションがあります。下の作品はろくろで薄くひいて柔らかくしておいて、金塊を抱かせている形にしたものです。
左側のふたつは金の部分は小さくなっていますが、金が25%ほど含まれたリキッドゴールドを塗って焼いたものです。金が少ない作品ですが、やはり金は金で、相場で安くなったり高くなったりするものですからこの頃はアフリカで戦争があったりして、金はずいぶん高騰していました。
70年代後半からは、徐々に象徴的なかたちになってきました。表面の処理も丁寧になっています。
有機的な形をパッケージしたり、映り込みをパッケージしたりしながら、次のテーマを探していたころです。
パッケージシリーズの後半、80年代の作品です。下の作品は横幅が1メートルにもなる大きなもので、短冊上の金や銀をはめこんだもので、京都の近代美術館にコレクションされています。
左側は「痕跡」シリーズです。この時はふたつのテーマが同時進行で進んでいました。
つくり手が一番こわいのは、アイデアがなくなる時です。それは作家がなくなることを意味しています。左側の痕跡シリーズはそんな時にできたもので、パッケージシリーズを応用してつくりました。
これはパッケージと痕跡が一緒になった作品です。表面にある○、×、△は、指先でひっかいたもの。土の動きが瞬間的に出て、生々しさがよく出る、訴求力が強くなっています。
この作品は温泉旅館のロビーに飾ってあり、とても喜んでもらっています。
全部、指で痕跡をつけたものです。落書きのようにしたり、多様になっています。だいたい私の技法は単純です。今回の展示作品も落下させてつくったもので、単純ですが土そのものの良さを引き出すのによいと考えています。
横1メートルほどの大きな作品です。