Artist Message
アートは思想の具現である。西洋美術史の題材は人間を中心にしている。
日本の美術史を見ると自然が題材になっている。西洋人は神を人物として表現している。日本は山も神、川も神の文化である。かつて自分も自然の一部である自覚をもつ民族でもある。山水画は見る人がその絵の中に入れるかのように想わせる。欧米の風景画は自然を眺めるための窓である。
私は作品を見る人たちが、その絵の世界に入り込んだような錯覚をするように意図している。地上でもっとも神聖な場所は自然のなかにある。自然界の全てに魂が宿っている。
紙、筆、岩絵の具、膠、箔など日本画の素材は全て自然の物である。描く時私は風、気候、温度や湿度とその変化を意識しながら材料を合わせて調合する。夏にあった絵の具の濃度は秋にあわない。日本画を描く業は自然を意識することである。自然と一体になって描く必然性が喜びである。その必然が題材に成るほど心に響くようになる。
自然界は時に激しく時に優しく無秩序のような秩序を持つ。私達に沢山の事を教えようとしている。私は神聖な魂の宿る森林も荒野の渾沌とした激しい風中に荒らされていない植物も現代人の比喩と見ている。私は自然の声を持って人の声を持つ。その美しい歌を心いっぱい絵で歌う。(アラン・ウェスト)