とにかく楽しむことを止めない。
というのが、ずいぶん前からの野村さんに対する印象である。
「制作は常に楽しい」というのが、展覧会の度に野村さんから聞く言葉で、確かに実際そう見える。
ただ、そうは言ってもモノを生み出すというのは楽しいことばかりではないはずで、
時に楽しさに至るための苦しさというのもあるはずで、本当に楽しいことばかりなのだろうかと毎回不思議にも思っていた訳である。
「頭の中にあるものが現実として目の前にドンと現れる、こんな面白いことはない」
現在展覧会中の「つちのひと」の野村さんが会期中に何気なく言った一言である。
特に私が何か聞いた訳ではないのだけれど、ある一日の帰り際に野村さんが話してくれた雑談は、
今の自分が求めていた答えを教えてくれたようで少し驚いたのだった。
その答えは、ずいぶん前から知っていて改めて聞かされているような何とも不思議な感覚。
過去・現在・未来は繋がっている。
いろんな話を聞くうちに、野村さんの楽しむ姿勢の断片が少しだけ分かったような気がした今展。
何事も気持ちの持ちようひとつで同じことが違って見えたり感じたりすることがある。
取捨選択は自分の中にあり、どう捉えるかも自分次第。
楽しむための苦労や努力ならば、それさえも本気で楽しく取り組めてしまったりするものなのだ。
楽しむということには、単なる楽しいだけでない要素がたくさんある。
如何に人生を楽しむか、を見つける楽しみの積み重ねなのかもしれない。
「つちのひと」は、そんな楽しみ方を続けている作家によって生み出されている。
楽しみの先の先を期待しつつ。
野村直城の「つちのひと」は明日まで。