「施美時間」最終日。
4回目を迎えた「アート・プログラムin鶴林寺」は、いつもより規模を縮小して開催したものの、
終わってみれば、とてもたくさんの方々にお越しいただきました。
発足当初から現代アートを貫き続けているアート・プログラム。
面白いなぁ!と言っていただける反面、「分からない」「何を意味しているのか」と言った疑問も珍しくなく、
その度に作品の見方は自由であること、
と同時に、個人的見解として時に私自身が心動かされた理由や箇所をお話することもある。
今回は、初めての試みとして大阪大学の佐藤宏道教授と研究者の北口正敏さんの参加を得て、
筋ジストロフィ患者の作品を展示した。
患者さんの作品は、決してデッサンでも風景画でもなく、現代アートを地でいく作品に受け取れる。
にも関わらず、「分からない」という感想が一度もなかったことは、
先生方の膨大な研究とその成果が、作品の中に見て取れるからに他ならなかった。
これは、アートにおいては画期的な事実で、私自身とても勉強になったし考えさせられた。
絵画という、言葉では非常に表しにくい分野をAIによって解析し、
それを実際の医療現場で役立てようというのだから、先生方の脳は凄まじい。
その研究は、ゴッホやピカソ、モネやシャガールといった名画の色相を分析するところから始まる。
そして実際の患者さんを対象に検査を繰り返し、
痛い検査をせずとも色覚によって体の内部の疾患の進行具合が分かるということを発見するに至る。
先生方の研究は、実際に研究の成果が形になることが目的であると思うが、
その過程には患者への想い、医療者への理解と自身のすべきことを実践し、
それらを取り巻く環境や制度がどうであるか、実際に真剣に考えるべきは何であるかを問うている。
会期中、来場者ひとりひとりに熱心にお話される先生方を見て、
研究を超えた人としての姿勢に、私自身 感じるものが日々積み重なっていくのが分かった。
今回展示した作品は、先生方と共に実行委員のメンバーも徳島病院を訪ねて選んだものである。
あくまで、いつもの企画展と同じ目線で良いと思う作品を選んだ。
難病患者が頑張って描いた出来の良い作品ではなく、優れたアートとして自信を持って展示した。
患者Yさんではなく、本当ならば画家 山田さん のように紹介したい気持ちがやまやまであるが、
また、この他にも持ってきたい作品は多々あったが、それは次回にしたい。
筋ジス患者の作品ブースは、毎日多くの人が訪れていただいた。
一般の来場者はもちろん、施美時間の参加作家・ボランティアスタッフ、そして我々実行委員も
大人も子どもも、心に響いた方は多かったのではないかと思う。
涙を流す方も少なくなかった。
幼くして自分の命の期限を知り、全てに意味を感じられず自暴自棄になったり気持ちが腐ることもあるだろう。
それを我々はただ可哀そうに思うのではなく、周りが寄り添い支えることで
患者自身が如何に人生を生きるかを見出すことで、充実した人生を送ることにつながる。
言葉は少し違っているが、そんなことを北口さんが仰っていた。
辛い入院生活についての説明に、悲壮感が漂わず聞くことができるのは、
支える側にそういう考えがしっかり根付いているからだと思う。
そして、佐藤先生は施美時間も終了する頃、優しくこうも言われた。
「筋ジス患者は、私たち健常者にエールを送ってくれている存在である」と。
まさに、唖然とするほど仰る通りだった。
彼らの作品=生きざまに触れて、心打たれ自己への糧を得て明日への光を見ているのは、
筋ジス患者ではなく、間違いなく我々だろう。
筋ジスと同じ筋神経疾患に属するALSは、いつ誰がなってもおかしくないという。
もっと多くの人が現状を知り、彼らの可能性を潰さない世の中になることを切望する。
会場では予想以上のアンケートを集めることができました。
ご協力いただいた皆さま、本当にありがとうございました。
今回の展示で得たものを、次回の大阪大学とのコラボ展で更に発展させたいと思う。