渋谷さんのアーティストトークから1週間がたち、展覧会も明日までとなりました。

”こちら側でも向こう側でもないもの・ちょうど間(あいだ)あるいは接点”

これは、渋谷さんが大きなテーマとして掲げられているものです。

自己の内なる世界と、外側の世界との間。

私たち人間で言うところの皮膚にあたる訳ですが、

可視化してみるなら、皮膚だけを吊るして外側からも内側からも見てみる

制作は、ある種そんな感覚とも言われていました。

これだけ聞くと「やっぱりアーティストは変わっている・・」と思われそうですが、

アーティストでなくとも、私たちは誰しも内と外を行き来しながら日々を送っている気がします。

時には意識的に、あるいは無意識の世界で自分で認知しない世界にまで行っているかもしれません。

ギャラリーに展示している大作2点は連作になっています。

似たような対の作品でもある訳ですが、飾る場所が違うだけで、

かなり印象が違って見えるのがお分かり頂けるでしょうか。

 

渋谷さんによると、人はとかく白か黒か、0か10かに決めようとする傾向があるけれども、

物事の間には実に様々な要素がある と言われています。

この言葉にはとても共感しました。

確かに、あらゆる事柄には一見して表や裏だけには見えてこない多様性が実は含まれていて、

そこを見抜く力や感じ取る視点があるかないか、

また、どれだけの感覚を以て捉えるかによって、人も作品も本質が見えてくるのではないでしょうか。

哲学にも思えてくるアートの面白さのひとつかもしれません。

ステンドグラスや水面のようだとよく言われる分割された作品の他に、

同じく油彩でありながら日本画のような質感で表現されたものもあります。

飛行機の上から見た風景にインスピレーションを得た「雲の裏から」(左)。

赤い壁に飾られた「月・雲・夜」は、どことなくクリムトを連想させるモダンな雰囲気。

紫と黄緑が印象的な「Between」は個人的にも好きな作品です。

 

ここ数年制作しながら意識していることは、

内なる自分とその外側の世界との間(あいだ)にあるもの。

ちょうど間(あいだ)であって、こちら側でもむこう側でもないもの。

なかなか姿をあらわしてくれませんが、

今回の展示ではこの二つのの世界を行き来する事象としての「水」と「光」をモチーフに取り上げ、

表と裏のない瞬間に少しでも近づければと考えています。 渋谷 清

 

渋谷 清の「水と光の間」は、3月17日(日)16:00まで。

 

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