ガレリアプント神戸が開廊して間もなく来てくださったのが藤田雄大さんだ。
「はじめまして」というような挨拶をしたかしなかったか記憶が定かではないが、
その存在はかなり前から存じ上げていた。
美術以外の世界もそうだと思うが、各々専門分野というのは意外と狭い世界であり、
初めて会う作家も知り合いの知り合いだったり、
どこかで何かが繋がっていたりすることがある。
藤田さんにも寄稿していただいているPunto Press vol.11でも触れたのだが、
私はあまのじゃくなところがあって、
皆が褒めるものには「いや、そうでもない」と深掘りしたくなり、
皆が良くないと言い出すと「いや、面白いよ」と主張したくなる。
これはあくまで悪い癖なので、どんな時も人の意見ではなく、
自分で実際に観たり話したりした自らの感覚に従うことにしている。
こんな前置きをしておきながらお詫びするしかないのだが、
藤田氏はいかにもアーティスト然とした気取った書家なのではないかと、
あまのじゃくな私は密かにそんな印象が拭えないでいた。
それには、藤田さんの役者のような整った顔立ちと舞台映えする立ち振る舞いが災いしている。
警戒しながら言葉を交わすと、拍子抜けするほどに気さくな方で
思わず「もっと気取った人かと思ってました」と率直な感想を述べてしまった。
書の作品をプントで展示するのは、故 松本硯之さん以来16年ぶり2人目である。
先入観なく自身の目線で藤田さんの作品と向き合いたいと思う。